小公女の舞台、ミンチン寄宿女子学院に関わるトピックを、諸々まとめてみました。このページでは、食べ物に関する考察を・・・
学院での食生活。全寮制という環境下では、首脳陣の経営方針が最も如実に表れる部分です。少しでも経費を削減したい院長サイドとしては、真っ先に削る（手を抜く）べき項目と言えるでしょう。食事に格差をつけることによって学内の力関係を思い知らせる、というのが、ミンチン院長の考え方です。
物語の中では、食事の描写はかなり見受けられますが、メニューがはっきりしているシーンは、意外と少ないようです。一般に、イギリス料理は美味しくない、と言われていますが、ミンチン学院の味は、どれほどのものだったのでしょうか。
特別寄宿生のセーラさんは、転入当初、自室で別メニューを摂っていて、一般生徒との摂取カロリーの差は歴然としています。品目自体が多く、卵料理もあり、これまで豊かな食生活を送ってきた事が伺えます。
また、セーラさんが食堂で全生徒と一緒に食べるようになってからは、富豪令嬢である彼女を意識してか、学院の食事の質は向上し、スコッチ風羊肉のスープとキドニーパイなどが出されています。
結果として、学院みんなの栄養状態が改善されるきっかけになりました。
主人公セーラ・クルーさんは、英仏ハーフのインド育ち、という生い立ちです。従って、美食の本場、フランスのフルコース料理や、インドのカレーなどを知っていたと思われます。彼女の舌は相当肥えていたと言えるでしょう。
そんな彼女の口に、ロンドンの下町料理が合ったのかどうか・・・
ところで、ジャガイモ・人参・玉ねぎ・キャベツとくると、すぐにカレーライスを思い浮かべてしまうのは、私だけでしょうか・・・？
経営者にはバランス感覚が必要。特別寄宿生を文字通り特別扱いする傍ら、一般生徒の献立はかなり質素です。果たしてこれで、これから成長期に入る少女たちの旺盛な食欲を満たせるのかどうか・・・
ベッキーさんがスープのお鍋をひっくり返してしまったとき、セーラさんの一声で、みんなはスープなしの朝食を受け入れましたが、内心はかなり辛いものがあったのでは・・・
また、代わりの品が出された様子が無いことから、学院は食材の仕入れを相当ケチっていることも推測されます。
使用人たちには、パンまたはふかしたジャガイモと具なしスープ程度と、徹底した食費の切り詰め策が行われています。
薄給に耐えて作った食べ物が、自分の口に入る事はない・・・労働者階級の悲しい宿命です。
そうした彼らの鬱屈した思いは、より弱い者へと向けられ、やがてメイドの少女が、不満の捌け口として虐待されることになってゆきます。
学院経営を支える使用人や、何より大切な生徒たちの食べ物を軽視する一方、院長先生は贅沢な味を貪っています。
生徒へ厳しくテーブルマナーを指導する裏で、自らは寝室に食事を運ばせ、わがまま三昧の毎日です。メイドの給仕で食後のティータイムまで楽しめる、最高権力者だけに許された至福の時・・・
実の妹、アメリア先生でさえ、同じ食事を摂る事はできません。
生徒の生殺与奪は思いのまま・・・独裁的な院長にとって、自分の目が届かないことなど、あってはならないのです。
虐げられた少女たちの、ささやかな屋根裏パーティー。わずかなケーキやクッキーを持ち寄って、つかの間に幸せを・・・
いいえ、そんなもの、決して許しません！ましてやミートパイの持ち込みなど、言語道断！懲罰はもちろん、食事抜き。そう、ここは院長の天下。我は国家なり。
メイドにやる食事など、ないのです・・・
ミンチン院長が、食べ物に対してここまで浅ましい姿を見せるのには、彼女の過去が影響しているのかも知れません。
大変な苦労をして、学院をここまで作り上げてきた道のりでは、当然ながら粗末な食生活を強いられてきたものと思われます。その反動で、今の院長先生が出来上がったのでしょう。
それなりの努力をして掴んだ、現在の小さな成功。しかし・・・
初心、忘れるべからず。
このような横暴極まりない院長の振る舞いに対して、アメリア先生は最後に反旗を翻し、学院の実質経営権を奪い取ります。
食べ物の恨みは恐ろしいのです・・・
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