世界名作劇場.net 小公女セーラ研究サイト:小公女30周年記念作品 セーラ萌ゆ【12】 エピローグ

世界名作劇場.net 小公女セーラ研究サイト
kttl.png

URL http://alittleprincesssara.web.fc2.com/

qqq.png

エピローグ

今日もピーター君は露天の店先にいた。学院での戦いが終わり、彼にも日常が戻ってきたのだ。硝煙よりも新鮮な野菜の香りが好きな、生粋の下町っ子なのだった。

思いがけず開花した、戦闘機パイロットとしての才能も、今の彼には無用の物だった。学院に残る道もあったが、勉強は柄でもないと断ってしまった。下町への捨てがたい思いがあったのは確かだが、本当の理由には彼自身も目を向けたくはなかった。

…あのままそばにいるだけなんて、辛すぎる…

かなわぬ想いを忘れるには、この暮らしが一番であった。

「お~い、ピーター、そこの野菜配達しといてくれ」

「はいよ!毎度あり!」

快活に答えて駆け出そうとした背中に、澄んだ声が重なる。

「こんにちは、ピーター」

「お、お嬢様…!」

そこにありえない人の姿を認めて、彼は絶句した。

「ど、どうしたんです?」

「あら、どうしたかって、お野菜を買いに来たのよ。」

間近に佇むセーラ・クルーは、野菜かごを手に微笑みを浮かべる。さすがに、あのグレイのメイド服ではないが、かつてと同じエプロン姿だ。

…彼女は学院の主軸スタッフとして、教壇に立っているはず。こんなところにいるわけが…

「お教室にいるだけでは息が詰まってしまうの。こうしてお使いに出るのも気持ちいいものだわ。それに…」

明るく話す彼女が眩しくて、言葉が見つからない。

「で、でも、どうしてわざわざお嬢様が?新しいメイドも入りましたし、なにも直接いらっしゃらなくたって…」

「どうしてか、わからない?」

いたずらっぽくきらめく碧い瞳が、少年の姿を映す。

「だって、あなたに会えるもの」

5月のそよ風を受けて、店先のひまわりが静かに揺れていた。

END

~CONTENTS~
98.png
34drf.png
dsdds.png
32er.png
fdb.png
rf.png
fv.png
cvfd.png
h6.png
54er.png
2342.png
gbmu.png

inserted by FC2 system