世界名作劇場.net 小公女セーラ研究サイト:小公女30周年記念作品 セーラ萌ゆ【9】 アメリカ参戦

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アメリカ参戦

「まあ、ラビニア」

入口に立つブロンドの少女に、セーラさんは笑顔を向けた。特別寄宿生と学院メイド、そして代表生徒の座…二人のこれまでの経緯を知るみんなは、どうなることかと固唾をのんで見守ったが、セーラさんの中ではラビニアさん対するこれまでのわだかまりなど、既に連日の戦闘の彼方へと消え去っている。

「あなたのことはずっと気にかかっていたの。どうやってここに?」

「あら、普通に学院本部を通ってきたのよ。あれだけ毎日行き来してたのに、もう忘れちゃったってわけ?」

最前線一帯は「海峡」と呼ばれ、院長軍の厳重な監視下にあったが、ラビニアさんは白昼堂々、そこを抜けてきたのだ。そのあまりに偉そうな物腰に、誰もがあっけにとられているうちに、無傷でここまでやって来たというわけであった。腰巾着の二人もむろん一緒だ。

セーラさんに対しては、万事意地悪の過ぎた彼女ではあったが、その度胸の良さは認めねばなるまい。後にこの脱出行は『チャンネルダッシュ』と命名されることになる。

「さてと、お土産が届いているはずなんだけど」

ラビニアさんの言葉に、大補給部隊を振り返るセーラさん。

「これを、まさかあなたが?」

「ええ、そうよ。お父様に頼んだの。それにしても、限度って物を知らないのね、あの人」

ラビニアさんは苦笑いを浮かべた。そっと匿名での援助など、彼女の柄ではない。そう、彼女の父は、すなわち合衆国大統領その人であった。

「あなたさえよければ、どんどん支援してあげても良くってよ。これは貸しにしておくから、あなたがダイヤモンドプリンセスにでもなったら、倍返しにして。その頃には私もファーストレディだから」

「ああ、心からのお礼を言わせていただくわ、ありがとう、ラビニア…」

「お礼なら、クリスフォード氏に言うことね。イギリスでの手配は全部彼がやったんだから」

二人の少女は、そっと握手を交わしたのであった。そして…

「そうだわ。ラムダスさんのお帰りにご一緒して、お隣へ伺いましょう。そうすれば、これまでのお礼もできるわ」

まもなく新月の夜、セーラさんとラムダス大尉のほか、予定外の重量級賓客を乗せて深く船体を沈めた魚雷艇『PT102』号は、滑るように司令部を後にした。

「ああ、このまま独身生活とお別れすることになったらどうしましょう。ハロウィンでの占い通りだわ…」

クリスフォード氏が三十代の独身資産家と聞き、高ぶりっぱなしのアメリア先生。彼女の妄想は、千の夜を越えて暴走し始めている。

「お嬢様ぁ、どうかご無事で~」

「先生、さようなら~」

見送る年少組の生徒たちの方が、よほど落ち着いている。

「ロッティ、いい子にしていてねぇ。I shall return!」


「なんですって?ラビニアが?!」

「へ、へい、何でも武器貸与法とかいうやつで、一気に戦力を回復しちまったみたいです」

「くふぅ…おのれ、アメリアにあの小娘、なんと目障りな…」

散々悪態をついた院長閣下だったが、戦局が容易ならざる局面に至ったのは間違いなかった。米国を敵に回したらどうなるかは、前大戦でドイツ帝国が身をもって証明している。こうなったらもう、一刻の猶予もない。準備不足は否めないが、決戦の時が来たようであった…

ひとひねりで決着をつけるつもりが、戦闘は長期戦の様相を見せ始めている。航空戦では、護衛戦闘機の航続力不足を突かれて大敗し、地上戦でも戦車の弱装甲を見抜かれて敗北続きだ。愚鈍でド素人のアメリアや、博愛主義者のセーラにできる芸当ではない。

「ぐぬう・・・小癪な・・・どうやら軍事顧問を雇いましたね・・・ならばこちらも・・・」

まさか、あのアーメンガードさんの成せる技だとは、夢にも思わない院長であった。

「ジェームス!軍事顧問のロンメル将軍はまだなのですか!?見せてもらいましょうか、北アフリカで見せたという機動戦法とやらを!」

ヒステリックな叫びに、恐縮して答えるジェームス。

「へ、へい、それがそのう・・・断られちまいました。何でも本業が忙しいとかで・・・」

「なんですって?!!」

再び怒髪天を突く院長閣下。長くお山の大将をしてきたため、他人に断られるという経験が無いのであった。

「こ、断ったというのですか?この千年女王たる私の頼みを・・・ぬうう、あの伊達ゴーグル男め、調子に乗って周りが見えなくなったのね」

・・・そりゃあんた自身のことだろうが・・・心の中でつぶやくジェームスだったが、強くは言い返せない事情があった。実はロンメル将軍招聘の話は、ジェームスが独断で握りつぶしていたのだ。・・・あんな天才に来られちゃ、俺の席が無くなっちまう。職場のライバルは少ないに越したことはねえからな・・・

複雑な男心なのであった・・・

~CONTENTS~
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