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育ちのいい好青年ファブリ技師。世の中の善意を体現しているかのような彼の身に、ふと訪れた大きなチャンス。掴み取るなら今・・・

ファブリ技師は本当に善人なのか?

ペリーヌ物語マロクール編において、ファブリ技師は実に大きな存在です。何かとペリーヌさんの力になり、良き相談相手でもありました。彼女の小屋での暮らしぶりに素直に感嘆し、ランプや本の差し入れなどを行ったり、辛くあたってくるテオドール氏やタルエル工場長から、ペリーヌさんを守ってくれたこともありました。だからこそ、ペリーヌさんも「ファブリ技師は最も信頼できる大人」という認識を持っていたようです。

さて、そんな好人物の彼ですが、本当に他意なく行動していたのでしょうか。ここでは、ひょっとしたら、というスタンスで、半創作風に、この善人キャラクターを検証してみたいと思います。

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<オーレリィはペリーヌ・パンダボワヌ?心の隙間に囁きかけてくる声・・・>

はじめは確かに、彼の一連の行動は、幸薄い少女を思っての善意から出たものであったのでしょう。現に彼の口添えで、ペリーヌさんは通訳の仕事を得ることができました。ですが、彼女の名前の秘密を知り、ある仮説へと思い当たった時、ファブリ技師の中に『野心』の二文字が浮かばなかったと、誰が言い切れるでしょうか。技師と通訳を兼任するほどの才能を持った幹部候補生の彼が、みすみす目の前に転がってきた出世のチャンスを逃すとは思われません。自分を慕っている様子のトロッコ係の少女が、もしもこのパンダボワヌ工場唯一の後継ぎであるならば・・・彼女を使ってビルフラン氏を動かし、やがては工場全体、そしてマロクール村を我がものにする・・・芽生えた思いは速やかに野望となり、彼の全身を包み込んでゆきました。そして、その優秀な頭脳が歪んだ欲望に満たされたとき、平和なマロクール村を舞台に、疾風怒濤の人間模様が幕を開けたのです。

そうした前提で見てみると、以後の彼の動きには、ある連続性があるようにも思われます。走り出した好青年が手にするのは、汚れた成功か、それとも・・・

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<行動開始。作戦名は"マロクールの青い風">

マロクールの全てを我が手中に・・・一度燃え上がった野望の火は、すべてを焼き尽くすまで消えないのです。

まずはペリーヌさんに対して、彼女の懐に入り込むために、これまで通り、いい人を演じ続けます。一見、その様子はこれまでと何ら変わるところはなく、誰ひとりとして、ファブリ技師の本心に気づく者はいませんでした。しかし、さわやかなその笑顔に、もはやまごころはなく、彼を突き動かしているのは打算だけでした。そして、ことあるごとに、ペリーヌさんに真実を話すよう仕向け、ついには全ての事情を知ることになるのです。

では、ペリーヌさんが意を決して、ファブリ技師にすべてを打ち明けた、ピキニ公園でのシーンのやり取りを見てみましょう。踏みにじられる、少女の純情・・・

【第43話『日曜日。ペリーヌは・・・』より】

※(  )の中は、心の声です。

Fabri
『やっぱり君は・・・君はビルフラン様の孫だったのか・・・』
(やはりな・・・俺の目に狂いはなかった)

Perrine
『ファブリさんお願いね、このことは誰にも言わないで・・・もちろん、おじいさまにも』
(とうとう言ってしまったわ。でも、ファブリさんなら・・・)

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『ああ』
(ふふっ・・・当たり前だろう?言うわけないさ、言うわけが・・・)

Fabri
『でも、なぜなんだ。なぜ黙っているんだい、君は?』
(そこが知りたいんだよ、そこが・・・)

Perrine
『おじいさまは、私の母をとても憎んでいるし、孫の事など全く関心がないとも言ったわ』
(おじいさま、孫のペリーヌはここにいるんです。それにお母さんは、おじいさまが思っているような人ではありませんでした・・・)

Fabri
『だけどビルフラン様は、君が自分の孫とも知らないのに、お屋敷に住まわせたんだよ。君のことを気に入らなきゃ、こんなことはしないさ。君が孫だとわかれば、一層君のことが好きになる』
(なるほど・・・ここはしっかり誘導しておかなきゃな)

Perrine
『本当にそうなるかしら・・・?』yy.png
(もしも、もしもそうなるなら、なんて素晴らしいことでしょう・・・)

Fabri
『あたりまえじゃないか!』
(そうならないと、こっちが困るんだよ!!)

Perrine
『私が孫だと名乗るためには、私の父の死んだことを教えなければならないのよ。おじいさまは、私の父が、おじいさまの息子が、生きていると思い込んでいるのよ』
(ああ、私はどうすればいいの?教えて、ファブリさん・・・)

Fabri
『でもそれは、遅かれ早かれ分かることじゃないかな』
(ここは詰めておかなくては・・・)

Perrine
『そうかもしれないわ。だけど、あんなに父の帰りを待ち望んでいるおじいさまに、今私は父の死んだことを告げる勇気はないの・・・』
(とてもできないわ、そんなひどいこと・・・)tt.png

Fabri
『それじゃ君は、永遠に孫であることを知らせないつもりなの?』
(させるか!)

Perrine
『ええ、それでもいいと思っているわ・・・もし、おじいさまを悲しませないで済むんだったら』
(そう、それでもいいの、それでも・・・)

Fabri
『君は変わってるなあ・・・いいかい、君がビルフラン様の唯一の後継者だとすると、あの、フランスでも1、2を争うパンダボワヌ工場は、君のものになるんだよ』
(で、いずれは俺のものにね・・・)

Perrine
『ファブリさん、私はあんな工場なんかどうでもいいんです』
(どうして分かってくれないの?ファブリさん・・・)

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『絶句・・・!』
(お、俺の夢を・・・どうでもいいだと?!)

Perrine
『私が欲しいのは、おじいさまの心からの愛情です』
(お母さん、これでいいんでしょう?これで・・・)

Fabri
『ペリーヌ、君は一体、これからどうするつもりなんだ?』
(どうやら、作戦の練り直しが必要だな・・・)

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<ついに掴んだ敵の真実。もはやマロクールは我が手の中にあるも同然・・・>

更には、ペリーヌさんの身分を確かめたあと、ビルフラン体制への不満や工場改革の重要性を説き、彼女の意識を変えさせることに成功しました。これらは明らかに「ビルフラン後」を見据えての布石であったと思われます。もしも、これらのやり取りが、ペリーヌさんの身分が明らかになる前に行われていたのなら、むしろファブリ技師は「年少者を導く正しい大人」であったとも言えたでしょう。しかし、まだ正式に名乗り出てはいないとはいえ、相手はフランスでも1、2を争うほどの大製糸工場の後継者なのです。そんな彼女に、未来に向けた自らの考え方を切々と説く、という行為の持つ意味を、優秀なファブリ技師が理解していないはずがありません。

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<目的のためなら、手段は選ばず・・・>

そして事態は、ファブリ技師の思惑通りに進みます。孫のペリーヌさんの進言で、工場改革へと大きく舵を切ったビルフラン氏。これによって、テオドール氏やタルエル工場長は完全に後継者争いのレースから脱落し、邪魔者は消えました。やがて訪れたクリスマス。ファブリ技師は、ビルフラン氏から直々に、改革派の労働委員会責任者に任命されます。もはや彼の勝利は目前です。今まで通り、ペリーヌさんの前で善人を演じ、さりげない言葉をかけておけば、あとはそれがビルフラン氏に伝わって、万事がファブリ技師の思い通りになるのです。かつてはあれほど恐ろしい存在に思われたビルフラン・パンダボワヌ氏も、今のファブリ技師にとっては、孫を溺愛する愚かな老人としか映りませんでした。

”将を射るには、まず馬を射よ”の言葉通り、ペリーヌさんの信頼を得ることで、ファブリ技師は間接的に、パンダボワヌ工場の経営方針を意のままに操れるポジションを手にしたのです。さすがのビルフラン氏も、ペリーヌさんへの愛情が優先するあまり、その裏で暗躍するファブリ技師の影を見落としてしまいました。

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<敵本陣へ突入せよ!>

飄々とした態度で周囲を欺きつつ、自らの野望へと突き進むファブリ技師。もはや、彼の野望達成は時間の問題かと思われました。しかし・・・聡明なペリーヌさんは気付いてしまいました。優しい彼の本心に。自分は知らずに操られていただけ、ということも。そして今の彼には、すべてが出世のための道具にしか見えていないということにも・・・

策士、策に溺れる。ファブリ技師は、ペリーヌさんが普通の少女ではないということを、すっかり忘れていたのです。ペリーヌさんがマロクールにやって来た時、その不思議な魅力を真っ先に感じとったのは、ファブリ技師でした。そしてその後も、彼女の身近でずっと、その秀でた能力や人間的成長を目の当たりにしてきたはずでした。しかし、ペリーヌさんを単なる踏み台とみなした時点で、彼の目は曇り、人物を正しく見分ける能力を失っていたのです。

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悲しい事実を知り、ひとり苦悩するペリーヌさん。信頼できる人だと慕っていたファブリ技師の変心は、彼女の心をひどくかき乱しました。大好きなファブリさんが、こんなひどいことをするはずがない。或いは、どうしてそんなことをするのか、直接聞いてみたいとも思いました。ちゃんと話し合えば、きっと分かってくれるのではないか、とも・・・

しかし、やはりペリーヌさんは年齢以上に大人でした。自分の胸に渦巻く個人的感情と、工場やマロクール村の行く末とを比べたとき、どちらを優先させるべきかは明らかでした。誰にも話せぬ葛藤の末、彼女はみんなの未来のため、しばらくは全てを胸の内にしまって、このままファブリ技師に従い、改革を続ける道を選んだのです。そして、その道が太く大きくなってゆけば、やがてはファブリ技師の野心になど関係なく、この地はより良い場所になるに違いない、という想いを胸に・・・

そんなペリーヌさんの想いなど露知らず、出世欲と権勢欲にまみれた暴走機関車は、悪意という黒煙を撒き散らしつつ、美しいマロクールの街を切り裂いて、ひたすら走り続けるのでした。

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<その視線の狙う先には・・・>

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